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魔女の宅急便』の原作は主人公の半生を描く壮大な物語だった!
2013年05月20日(月) 07:00
電子ナビ編集部
『魔女の宅急便』の原作は主人公の半生を描く壮大な物語だった! | ダ・ヴィンチニュース


記事のタイトルにいささか疑問をもってちょっと調べてみた.もともと「壮大な物語」だったのだろうか?結果的に「壮大な物語」になったのか,僕の意見は後者だ.時系列で見ていこう.以下,特別な記載がない引用はウィキペディアによる.

「オリジナルは1982年から1983年にかけて「母の友」に連載された。」


魔女の宅急便
1985年1月25日初版発行。」


宮崎駿監督によって1989年に同名でアニメ映画化された。」


魔女の宅急便その2 キキと新しい魔法
1993年6月30日初版発行。」


魔女の宅急便その3 キキともうひとりの魔女
2000年10月20日初版発行。」


魔女の宅急便その4 キキの恋
2004年3月10日初版発行。」


魔女の宅急便その5 魔法の止まり木
2007年5月20日初版発行。」

魔女の宅急便その6 それぞれの旅立ち
2009年10月7日初版発行。」



余談だが,原作の続編が出る前のアニメのテレビ放映時の視聴率は以下のようになっている.


1990年(平成2年)10月5日(金) 24.4%
1992年(平成4年)4月3日(金) 21.5%



原作は福音館書店ジブリのアニメには宮崎と縁の深い徳間書店が関わり,そして,この度角川から文庫版が出版される.30年たってまだまだ取り上げられるまごうことなき人気作だ.ジブリ版は当初は一種のスピンオフ作品だったのだろうが,アニメのヒット後は原作の続編にも大きな影響を与えた事だろう.


もちろん,はじめから作者や編集者の間では長編化の構想があったのかもしれないが,それを実現せしめる際にアニメ化の影響は否定できない.つまり「原作は主人公の半生を描く壮大な物語だった!」ではなく,「続きを請われて結果的に半生を描いて完結した物語」と見る方が現実に即している.魔女の物語を現実に即してみる事の意義はいささか疑問ではあるが.


福音館書店のサイトに作者が主人公のうまれたきっかけについて語っている.


キキという名の魔女は本当にちょっとしたきっかけで生まれました。それはキキのような小さな少女のかいた落書きから始まったのです。その落書きの魔女はほうきにのり、柄にラジオをさげてとんでいたのです。ほうきの房の一部は三つ編みになっていて、ラジオのまわりには音符がとびはねていました。
「可愛い。音楽聞きながら族の魔女なんて、今てき!」
魔女の宅急便|みんなの人気者|福音館書店



実写は(アニメと)違うとの批判は,世界観を共有し,交わりながら,そして独立に進化を続けてきた同じ題名をもついくつかの物語にたいする評価としては適切なものなんだろうか?たくさんの糸で編まれた物語を,たまたま自分になじみのある一本の糸とは違うって理由で拒絶するのは,ちょっともったいないような気もする.