NSXに期待するところ

http://www.carview.co.jp/news/5/159203/
ホンダ、新型NSXを世界初公開


レスポンスのサイトにコンセプトカーのスペックがある.かつての,ホンダSSMからS2000っていう転落(失敬)のルートもあるので安心はできないが,NSX後継機はなかなか期待できそうな数字が並んでいる.



いわく,このような感じだ.

ボディサイズが全長4330×全幅1895×全高1160mm、ホイールベース2575mm。デビュー当初のNSX(全長4430×全幅1810×全高1170mm、ホイールベース2530mm)と比べると、NSXコンセプトは全長が100mm短い。
【デトロイトモーターショー12】ホンダ NSX、ハイブリッドで復活…3年以内に市販 | レスポンス(Response.jp)


仮想敵であろう新しい911のスペックが以下のとおり.


全長×全幅×全高=4491mm×1808mm×1303mm
ホイールベース=2450mm
http://www.carview.co.jp/road_impression/article/porsche_911/977/



全長はNSXの方が151mm短い,全幅はNSXの方88mm広い.ホイールベース911の2450に対して,NSXコンセプトは2575mmとなる.トレッドが発表されていないので,仮に全幅からホイールベース/トレッド比を推定すると,911が1.36,NSXもまた1.36となる.


カニ(直進しませんが…)とイカとを比べると,カニが旋回性能に優れ,イカが直進性能に優れることが想像されるように,一般論としてはホイールベーストレッド比の値が小さい車は旋回性能に優れる.両車とも太いホイールを装着するであろうことから,この値はいささか増加することだろうが,当代一流の911に比べて,現状NSXコンセプトは一歩も下がるところが無い.このことから,NSXは直線番長ではなく,旋回性能を重視したスポーツカーであることが想像できる.ミッドシップスポーツカーの設計として,その方向性は正しい.前輪にインホイールモータを搭載しているあたりからも,ホンダの気合がうかがい知れる.


願わくば,NSXは昨今のスーパースポーツの方向性である軽量化を突き詰めてほしい.GTRは,電子制御であの巨体で信じられない速さを実現しているし,それは見事な事だが,これはかつてのアウトウニオンPワーゲンのように,未来を切り開くための橋頭堡であり,これ以上のあの方向性の上での競争は無意味だ.いかにタイヤが進化し,電子制御が精緻化しようとも,質量はそのまま慣性の大きさにつながる.車体中央部にエンジンなどの重量物を集めるミッドシップレイアウトは,慣性モーメントを軽減するためのレイアウトであるが,そもそもの車重が小さければ運動の収束までが縮小され,ドライバーの操作に対する遅れが少なくなる.最高性能がどれだけかよりも,不可避な運動によって生じるタイムロスを軽減するのがトップアスリートの世界だ.スポーツカーに贅肉は必要ない.


直線で勝つのはアクセルに漬物石を置いても可能だ.最高出力など300馬力もあればいい.願わくば1200キロ未満(日本で話題のトヨタの86と同程度)であることを.可能であれば,1トンを切れば(アルミじゃ無理でしょうが…)間違いなく伝説になりえる.ちなみに,12気筒エンジンを搭載した60年代のフェラーリ365GTS/4通称デイトナの車重は1280キロで,365 GT4 BBが1361キロ(1160キロとしてしているサイトもあるがさすがにこれは…)とされている.もちろん,今日的な安全対策などを施していないクルマとの比較ではあるが,NSXには40年分の技術革新がある.


あと三年,ホンダアメリカがはたしてこの新しい米国製NSXにどんな個性を持たせるのか?かつて本田技研工業高根沢工場や本田技研工業鈴鹿製作所TDラインのように,ホンダのスポーツカー製造技術の向上をもたらしたが,モンタナ工場がNSXを生産することでどう変化を遂げるだろうか.