最高のオーディオグッズ

(今時分だとiPodの話などから)愛用のオーディオ機器はとたずねられたら、耳栓ですとこたえている。まぁ、そんな質問を受ける機会は滅多に無いんだけど。別に斜に構えてこたえてる訳じゃない。


外出時も家に居ても、CDなどで音楽を聴かなくなって久しい。そうすると、人込みにいる時の不快な音を遮蔽するためのCDプレーヤー以外の手段がほしくなる。


そんな用途にボーズのクワイエット・コンフォート2というヘッドホンを持っている。
http://www.bose-export.com/products/qc2/index.html


飛行機に乗る時の必需品だと思うが、毎日あれを抱えて歩くのも正直しんどい。そこで、普段は100円均一の店で売ってた、ウレタン状の押し潰してから耳の穴に差込む耳栓を愛用している。
100円ショップの耳栓[デジタル/シゴト/技術]


差込んでしばらくすると、耳の穴の形に沿って膨らみ、高調波からカットしてくれる。これだけで、満員電車の隣に突っ立ってるおばかさんのヘッドフォンから漏れるシャカシャカ音は聞こえなくなる。人の話し声の帯域は、この耳栓で十分に遮蔽されているとは言わないが、それでもまぁ効果がある。むしろ、この帯域を積極的に遮蔽していると、耳栓をしたままだと不具合を生じることが多いので、市販の耳栓の多くはこの帯域の音を積極的にはカットしていない。低音にはほとんど効果はない。


帯域とは別に、自分が発音源である音は、外部の音が遮蔽される分だけ強調されて聞こえる。つばを飲むような音にどきりとするし、ガムを噛んだりするのがこれほどうるさいとは思わなかった。いわゆる、骨伝導音は耳栓によって強調されることになる。


そして、意外だったのは100円の耳栓で、周囲の音を遮蔽すると、きーんという高調波のような音を感じる。音響の研究者以外で、無響室に入ったことがある人は少ないだろう。武蔵野にある某研究所の無饗室は取り壊されて高層ビルになった。以前は、初台にあるICCというメディアアートの美術館に無響室があったのだが、これも改装でなくなってしまった。日本で町中に暮らす以上、日常生活で音の無い世界を感じることは少ない。そんな希少な体験が、劣化コピーではあるのだが、100円の耳栓で追体験できる。


まんがで静寂を表す書き文字に「シーン」というのがあるが、あの表現は案外、正鵠を得ている。これまで、空気のように耳に入っていた高調波を取り去ると、色でいう補色のような音が、振動による信号としての耳でなく、脳に感じる。


耳栓、二つで100円。もっとも、一個に50円の価値はありません。