「わかった」じゃなくてさぁ…「他人の電話にイライラ、会話の半分しか聞こえないのが理由」:ロイター



他人の電話にイライラ、会話の半分しか聞こえないのが理由
2010年 05月 21日 11:12 JST
他人の電話にイライラ、会話の半分しか聞こえないのが理由 - ロイター


「米コーネル大学の研究チームの発表で、他人の携帯電話の話し声が気に障るのは、会話の半分しか聞こえないことが理由であることが明らかになった。」とあるのだが,そんなのは,今回はじめてわかった事ではなく,自明じゃなかったのかね?


刺激が少ない状況が続くと,人間の覚醒度は徐々に低下していく.高速道路催眠現象や「ハイウェイ・ヒプノーシス」(Highway hypnosis)とも呼ばれるぼーっとした状態になる.こういう感覚遮断された状況で幽霊をよくみる.定型処理が続くと,脳もサボるのだ.


これに対して,意味がわからない事,溜飲が下がらない事は,(これまでの経験から容易に処理できる「通常」のインプットとは異なり)不定形で個別の処理を必要とするインプット(≒危険度や緊急性が高い),すなわち警報であり脳の負荷が高まる.


かつて,アリストテレスは自然は真空を嫌うと言ったが,人もまた意味が無いことを嫌う.意図の無いところにも半ば強引に意味づけを行ってしまう.幽霊が発動される原因の多くは,無意味なものに卑近なものを重ね合わせて意味づけを行ってしまうことにあるのだろう.この仕組みで人でないものをあたかも人であるかのように見せることができるんじゃなかろうか?かつて,意味の真空嫌悪なんていう造語までつくって訴えたことがある.


はなしを元に戻して…


ケータイ電話で誰かがしゃべっているその場に居合わせた人々にとっては溜飲の下りない話し,すなわち警報なんだが,実はその警報は誤報.居合わせた皆さんにとっては,何の緊急性もない誤報に過ぎない.にも関わらず脳の負荷の高い「誤報」のベルを耳元で何度も鳴らされたら,誰だって不快だ.そんな事は,実験などせずとも半ば直感的に「わかる」だろう.ようは,直感的な説明に対して,このローレン・エンバーソン氏の研究成果はこれを携帯電話における状況で実験的に確認したってことじゃないのだろうか?


というか,そもそも電話ってのは,空間的に離れた二点を結ぶ基本的にはパーソナルな道具だ.携帯電話の不快さはそれをパブリックに持ち込んでいるのに,あたかもパーソナルな文脈であるかのように使う事に対する無作法さ,傍若無人さが苛立ちの原因なんだろう.


パーソナル・スペースやポータブル・テリトリーなんて言い方があるが,人は自分の身体を中心とした意識の中での占有空間をもっている.人混みにいれば,それぞれの占有空間は最小になっているのだが,電車の中で化粧をしたり,電車内の床に座り込む,飛行機で靴を脱いで足の臭いを撒き散らすなども同様,こういう無神経なヤカラは,本来はパブリックな場でにおいて人目を憚るようなことをして,特定個人のパーソナルな場であるかのように振舞う.結果として,周囲の個々人が自身らの「人混みの中で最小化された」パーソナル・スペースに対してすら土足で踏み込まれる侵害を受けたように感じるからではないのかね?


昨今の日本語的表現を用いるなら,空気よめないヤカラが,苛立ちを誘発するのだろう.しかも,悪い事には,不愉快なケータイの通話ってのは,一人の「快適さ」のために,周囲の何人もに「不快さ」を生じせしめることにある.




余談だが,ここまで書いた文章を読み返して,ひどく生硬い文章だと思った.難しいことを(本質を歪めずに)わかりやすく書くのが真にアタマのいい人だ.これをもっと平易な日本語で書けるくらいならば,おれも優秀な学者なんだろうなぁ…というか,それ以前にたとえくだらない(としか思えない)ことでも,手順を踏んで発表すりゃ「サイコロジカル・サイエンス誌(聞いたこともありませんが)」に論文も掲載されますわな.んなもん,やったもん勝ちですわな.やらんもんは負け.反省するより論文書け,ですな.がんばろ.