世間知を「否定」するには相応の世間知の持ち主でないと



信じてはいけない「5秒ルール」、重要なのは時間ではなく落とした場所。
(ナリナリドットコム - 07月25日 16:53)
http://www.narinari.com/Nd/20100713944.html


いや,HACCPだのの観点からは0秒ルールなのはあたりまえ.で,どこに落としたかが重要かなんてのも世間知というか直感的にわかるだろう.「ナショナル・ジオグラフィック」って,いかにもアングロサクソンな思想的偏向があるようで,その知名度に反して記事の信頼度においては日本の週刊誌と比べても大差ない.


冷静に考えれば,サルモネラ菌が床にいたとして,それが落とした食品につきましたといっても,その食物上で菌が繁殖するまでにどれだけの時間がかかるというのか?5秒以内に拾った瞬間についていたサルモネラの量が経口摂取して危険だと言うのであれば,その場所が異常だ.


(記事には実験方法等は明記されていないから推測だが)寒天培地の上のようなin vitroな研究結果を,床に落とした食品の「安全性」に直結されるのは勇み足だと思う.だいたい,サルモネラなんてのは床面に限らず,その多寡を問わなければ空気中にも存在するし,玉子かけご飯なんてのは,鶏卵の表面に付着したサルモネラも一緒に食ってるが,それならTKG専門店は夏場は軒並み保健所から営業停止を命じられているはずだ.


参考:「鶏卵研究室」(1ページあたりのテキスト量が多いので携帯から閲覧の場合は要注意)
http://homepage3.nifty.com/takakis2/kenkyuu.htm


人間の生活空間で採取したサンプルは,どんなものであれ培養すりゃ菌ぐらい検出されますがな.そこまで無知なら「もやしもん」でも教材に取り入れたらいい.菌のコントロールってのは,All or nothingではなく,単位基準あたりどれくらいの量が存在しているかで測るべきであり,自分が喰う問題なら,自分が喰う場面に応じた測定をすべきだろう.


冒頭のHACCPに戻すと,あれは食品を加工する場と時間が,食べる場所から離れているからの危惧であり,いざ食べようと食卓に向かっている時に床に落としたものを拾い食いしたくらいで腹は壊さない.


参考:
HACCP - Wikipedia


そもそも,5秒ルールが適応されるのは,一般に自分が落としたものだ.ここで適応されるのは,おのおのの文化圏における浄不浄の概念であり,こと日本に置いて,たとえトイレの細菌がオフィスの床より少なかろうと,トイレの床に落ちたものは食べないだろう.


ようは,ありあえない状況に対して研究を行って,その結果をもってして世間知を覆したいなら,もうちょっとおもしろいやり方が必要なんであって,その観点からしてこの記事は3点くらいしか付けられない.


ただし,これを客に出すものでやると,記憶に残る船場吉兆のように大店だって無残につぶれてしまう.船場吉兆がつぶれたのをHACCPを適応しなかったからだとは言わないが,つくる場所と食べる場所が離れている以上は,3秒ルールの適応は間違いだったといえるだろう.浄不浄を食べる客が確認できない場所で判断するのはインチキだ.

  1. 結論,3秒ルールの適応は,自分が食べる場所において,自分の判断で決めるべき.
  2. 結論,やっぱりナショナル・ジオグラフィックは嫌いだ.