流行後対象とSI jinx

in_situ2006-11-17



http://www.sponichi.co.jp/society/news/2006/11/16/03.html
流行語候補も笑えないお笑い芸人


 年末恒例の「ユーキャン新語・流行語大賞2006」の候補60語が15日、発表された。大本命とみられる「イナバウアー」「シンジラレナ〜イ」「ハンカチ王子」などに交じって、「チョット・チョットチョット」などお笑い関連4語もノミネート。ただ、表彰対象のトップ10に選ばれると翌年以降は人気が低迷するジンクスもあり、お笑い芸人としては手放しでは喜べないようだ。



 98年「だっちゅ〜の」(パイレーツ)、03年「なんでだろう〜」(テツandトモ)、04年「って言うじゃない…○○斬り!…残念!!」(波田陽区)など、過去に多くのお笑い芸人の持ちネタがトップ10入りしてきた。その多くが、受賞以降は新ネタに悩まされてきたのも事実。“一発屋”のイメージがつくという、複雑な事情がある。



あれ?例に取り上げられている芸人たちは、『一発屋のイメージがつく』ではなくて、一発屋そのものですよ?




スポニチ紙の記者はご存知なかったようだが、これは、スポーツ・イラストレイテッドのジンクス(SI jinx、SI cover jinxとも)として知られている典型的な誤謬そのものだ。


短く説明すると、スポーツ・イラストレイテッド誌の表紙を飾ると、その選手が怪我をしたり不調に見舞われるってジンクスだ。


日本版には無いけど、英語版に項目があり、そこに例が挙げられている。
Sports Illustrated - Wikipedia
当のスポーツイラストレイテッド誌は、ネタ本を売ってる。この、商売上手!
http://sportsillustrated.cnn.com/features/cover/2002/jinx/main/


何のことは無い、雑誌の表紙になるくらい活躍している選手は、既に大活躍を収めている。というよりは、大活躍してるからこそ、雑誌が表紙に取り上げるのだ。


いかに名選手であっても、その後も永遠に上り調子のはずもなく、雑誌が出る頃に好調の波の頂点にいるのなら、頂点を越えたあとは落ちるのが当然だ。


もちろん、選手自信のキャパシティが、雑誌編集部の想像をはるかに超えているのなら、表紙掲載後にも一層の大活躍を続けるが、そうした場合はジンクスを打ち消す例として記憶に残ることはない。ただ、選手の大活躍だけが記憶に残る。


SI jinxを、ちょっとカッコよく言うと回帰効果(regression effect)ってことになるそうだ。
http://web.sfc.keio.ac.jp/~t95014ha/Hiyorin/shinkou2.html


僕が、このSI jinxについて知ったのは、ここのサイトの著者が引用している、ギロビッチの『人間この信じやすきもの』からだ。


また、Wikipedia(英語)のRegression toward the mean(平均への回帰の欄)にも、スポーツ・イラストレイテッド誌のジンクスが取り上げられている。
Regression toward the mean - Wikipedia
Regression toward the mean
In Spotrs


Regression to the mean in sports performance produced the "Sports Illustrated Jinx" superstition, in all probability. Athletes believe that being on the cover of Sports Illustrated jinxes their future performance, where this apparent jinx was an artifact of regression.





実力あるスポーツ選手ならいざ知らず、まぐれ当たりのネタが予想以上にウケてしまった芸人の多くが、その後二匹目のどじょうをつかめないのは想像に難くない。むろん、積み上げた実績がやっと実を結んだような芸人なら、その後も大ヒットはともかく、コンスタントにヒットを量産するだろう。そうなれば、誰も一発屋などとは呼ばない。ホームランの後に、ヒットを2、3本重ねれば、誰もまぐれ当たりとは言わなくなる。それができないからこその一発屋だろう。


でも、こうした一発屋の皆様方は、数年は中ヒットを飛ばした演歌歌手同様に、埋み火のように老人向けや地方局の番組でチラホラ見かけるんだよね。全国ネットの「あの人は今」的番組で、思い出したように消息を確認したりもする。


だいたい、タレントの多くは、一発屋にすらなれずに消えていくのを思えば、まぐれ当たりでも一つ当たっただけ見っけものではなかろうか?チャンスを活かせないのは、テレビタレント向きじゃないんだろうしね。

2006年の流行語大賞候補は、2007年には流行後対象でしかない。
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