Universal design; One size fits almost all.



表題で言いたいことは全部なんですが…


ユニバーサル・デザインってのは,できるだけたくさんの人が公平に使えるための設計指針です.
ユニバーサルデザイン - Wikipedia

個別の道具やパッケージだけでなく,広義の「社会インフラ」の設計にユニバーサル・デザインは不可欠な概念になります.インフラが,より多くの人にとって使いやすくなっていれば,他人の助けを求めることなく行動の自由が享受できます.

社会心理学でいう,返報性の原理という考え方があります.いわく,人は他人に何か恩恵を受けることで,その人に対して何かお返しをしなければいけないように感じるという考え方です.困難に際して,他人の手を借りることによって解決した場合,それがたとえ善意によるものであったとしてもどこかに引け目を感じてしまうことがあります.ことにそれが他人は容易に行えるものであり,かつ自らが相手に報いることが困難である場合,できれば他人の手を借りることなく日常生活を送りたいというのが本音だと思います.


その意味で言うと,介護福祉ロボットってのは「返報性誘引マシン」になり,なんで機械化するのかわけがわからん代物だと思います.機械の非人格性が要介護者にとっての「返報性」を生じさせないためのキーポイントなんですが,善意なる介護福祉ロボ開発者の皆さんはそうは思っていないようです.気遣いってのは,相手にそれと見せないで実施することが美しいと思うんですがね.
http://job.yomiuri.co.jp/news/jo_ne_06121114.cfm


わき道に逸れたので戻しますが,こうしたユニバーサル・デザインの概念ってのは常にコストとトレードオフ関係にあります.


ひとつの思考実験として,際限なくお金をかければ,高齢者,障害者,大人,子供,外国人,誰にでも対応するものが開発できますが,それが,サービスを受ける側の人数に対して十分な数が揃っていなければ順番待ちになります.


ユニバーサル・デザインの骨子は,量産化と分かち難く結びついています.量産化の際に,より多くの層に対して使いやすい設計を施すことで,使いやすさを実現するためのコストが薄められて,結果として市場には多くに人にとって使いやすい製品の数が増えることとなります.


だから,ユニバーサル・デザインってのは,全員をターゲットにするのでなく,コストとターゲットの拡大のバランスを見極めることで,「ひとつのもので,ほとんど全員に適応する」ようにつくらなければなりません.


それゆえ,One size fits almost all. ようは,小コストでカバーできるものから順番にカバーしていくことになります.


もちろん,コストが有限であればカバーできない人が残ることになります.その人たちはほったらかし?


NO, NO!


誰でも彼でも全部行政がカバーするのではなしに,そこからこぼれ落ちた人の個別ケースに対して重点的にコストを注ぎ込むことで,現在と同じ予算であってもより多くの人が住みやすい世の中になる,という筋書きです.




イギリスでは,同じような概念に対して"inclusive design"なんてしゃれた言い回しもあります.
http://www.usi.kyushu-u.ac.jp/blog/2007/03/inclusive_design.html


ちなみに,"inclusive"は,排他的なの意味をもつ"exclusive"の対義語です.