喫煙四十年



インドネシアの8歳少年、1日25本のヘビースモーカー
2012年 03月 22日 14:36 JST
http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPTYE82L03Y20120322

さすがに8歳は親がよくないとも思うが,喫煙年齢,それも外国のものを現在の日本の基準であれこれ論じても仕方ないだろうに.記事にも「インドネシアでは喫煙に年齢制限が設けられておらず」とあるように,その国のやり方に外国からケチをつけるのは無粋なはなしだ.それはインドネシアの大人が考えるべき事に他ならない.また,未成年の喫煙のニュースソースとしてロイターをはじめとした欧米メディアは,インドネシアを再三取り上げている点にも幾ばくかはメディアリテラシー的に背景に思いを巡らせても損は無いだろう.


「天災は忘れられたる頃来る」で今なお知られる明治の日本を代表する物理学者の寺田寅彦は,晩年の昭和九年八月に「喫煙四十年」という随筆(今風に言えばエッセー)を発表している.青空文庫にて全文が公開されているので冒頭を引用する.

「はじめて煙草を吸ったのは十五、六歳頃の中学時代であった。自分よりは一つ年上の甥(おい)のRが煙草を吸って白い煙を威勢よく両方の鼻の孔(あな)から出すのが珍しく羨(うらや)ましくなったものらしい。その頃同年輩の中学生で喫煙するのはちっとも珍しくなかったし、それに父は非常な愛煙家であったから両親の許可を得るには何の困難もなかった。」
寺田寅彦 喫煙四十年



その後も,喫煙の習慣がいかに物理学研究に役立ったかなどを面白おかしく皮肉たっぷりに綴っている.


中学からタバコを吸っていた寅彦は,旧制五高で漱石に出会い生涯にわたって親しく交流し,のちに東京帝国大学に進み,戦前の理化学研究所のエースの一人として大活躍し
幅広い分野の研究を発表.科学のみならず随筆や俳句,絵も広く愛されている.もちろん,寅彦だけが特異だったのではなく,当時は横文字だけでなく漢詩なども知識人の嗜みだった.ギリシャラテン語が西欧の知識人の常識だったかのように.師の寅彦同様,物理と随筆で名高い中谷宇吉郎という弟子も育てている.


未成年でタバコを吸ったらバカになるという説への反論として寅彦の名をあげていいだろう.


自分はタバコのみでは無いが,近ごろは愛煙家にいささか厳しすぎるのでは無いかとも感じている.タバコはそれを嗜むに値する大人であれば,その所作も含めて実に美しいもので,子どもがタバコをふかしているのとは一線を画していい.


今の世の中,あまりにタバコに厳しいのは,愛煙家自身が嗜好品を楽しむほどに成熟していないで,老けた子どもばかりが目立つからなのだろう.