奇をてらえばいいものではない



別に玉子かけご飯の日記ではないのだが,これはちょっと思ったので二回連続で玉子かけご飯の話題です.


あ、逆にねー たまごにご飯をかける「GKT」が提案される
京都三条 糸屋のむすめ
2012/12/12 08:00
あ、逆にねー たまごにご飯をかける「GKT」が提案される [えん食べ]


通販サイトにリンクがあるあたり,ほしのあきもかくやと言う宣伝のための提灯記事なのだが,これは無いよなぁと思った.


●「GKT」の食べかた
1. たまごをどんぶりの中に入れ、炊きたて熱々のご飯を半分よそってよくかき混ぜる。

2. さらにその上にご飯をもう半分ふたをするように乗せる。

3. 3分ほど軽く蒸らしてから食べる。



うどんの「釜たま」のように,先に溶いた玉子に上から熱いご飯をのせてかき混ぜるまではまだいい.しかし,せっかくのアツアツを三分も待っていたらご飯がさめるじゃないか.


玉子が凝固しはじめる温度は56度からで,80度で完全に固まります.卵黄は,65度から70度の間,卵白は70度から80度で完全凝固します.この凝固点の違いこそが玉子かけご飯のおいしさを形成しているのではないでしょうか?


たまごの熱凝固性
http://www1.cablenet.ne.jp/fumiffy/sozai/egg/egg6.html


以下,実測値ではなく推測にとどまりますが,炊き立てのご飯であっても,かき混ぜる段階で玉子と茶碗とに熱を奪われおおよそできあがり時には65度程度になっている事とおもいます.


卵黄が完全凝固する手前で,卵白は粘り気をもっているのがいちばんおいしい状態です.


玉子に対しご飯が十分にある状態では,かき混ぜている以上は,その反応は瞬時に玉子全体に波及します.1のかき混ぜる段階で凝固は起きているので,その後待つ必要はありません.さめた玉子かけご飯なんてのは,失敗した黄金炒飯みたいなものです.猫舌でないのであれば,玉子かけご飯は可及的速やかに食べた方がおいしいんです.


完全に凝固した玉子がいいのであれば目玉焼きを乗せればいいんです.これはこれでおいしいものです.多めの油でカリッと焼いた目玉焼きに醤油をひと垂らし.
半熟の卵黄を解きほぐしご飯とからませる,卵白も適宜切りほぐしてご飯と混ぜる,玉子かけご飯とは別のおいしさがあります.


先人の知恵というのは,時間をかけて熟成されてきたものです.単なる思い付きや,気をてらっただけの新メニューが,古典的な調理法を超えるのは容易ではありません.