秋葉原でラーメンといえばラーメンいすず



秋葉原は東京のラーメントレンドが凝縮された新ラーメンテーマパークだ!
2013年1月9日(水)6時0分配信 @DIME アットダイム
http://news.nifty.com/cs/item/detail/dime-20130109-059715/1.htm

まだ秋葉原が電気街だった頃,JR(昔は国鉄,更に年寄りは省線なんて言ってた)の秋葉原駅にへばりつくようにその店はあった.立ち食いそばのような店だがメニューは醤油ラーメンのみ.醤油辛いそのラーメンこそが,秋葉原に買い物に来た人間にとってのラーメンの味だった.


父親の職場が上野にあったので秋葉原には足しげく通った.ラジオ会館のビットインでNECのTK-80をみた.Apple][は,まずは偽物を先にみた.本物に触ったのはしばらく後のこと.PC-8000や,MZ-80でようやく現物を触る事ができた.なにに使うのかさっぱりはわからないがマンガの中に出てくるコンピュータと同じコンピュータだし,これから世界は変わるんだって漠然と思ってた.そのコンピュータでこの文章を書いているわけだから,確かに世界は変わった.


ラーメンいすずはおそらくは戦後の闇市や,秋葉原駅前にあった神田青果市場に出入りする人が秋葉原駅周辺で迅速に食事を済ませるための店だ.その意味では総武線ホームにあったミルクスタンドと何ら変わりはしないが,何しろラーメンは温かい.


昔の東京ラーメンなんてものは,今の基準でみれば食い物としては最下層だろう.醤油味と化学調味料ばかりが勝ったスープに,妙に黄色い麺がうかぶ.上にのってるものだって,ダシがらみたいなチャーシューに,ネギ,海苔,シナチクに鳴門巻きの薄切りくらいだ.


【コラム】秋葉原の駅前にあった伝説のラーメン屋『ラーメンいすず』の味を求めて
2012年8月29日
【コラム】秋葉原の駅前にあった伝説のラーメン屋『ラーメンいすず』の味を求めて | ロケットニュース24


当然の事ながら,九州じゃんがらラーメンだって無かったんだ(1984年開業).いまの○○風,△△系ラーメンなんてのは影も形も存在しない.


昔はよかったってのは年寄りの戯れ言だ.今,ラーメンいすずのラーメンを喰ったところで,郷愁以外の感情が浮かんでくるのやら?グルメな若者には味の素と醤油のお湯に,かん水の匂いがむせるだろう.それは,丼の中のラーメンだけでなく,開きっぱなしの引き戸から吹き込んでくる風にさらされて,かじかむ手で支えた丼のラーメンをすすればこそうまいラーメンなんだ.ガキが背伸びして喰うからいっそううまかった.


今の秋葉原だって,やがて過去になる.大好きだった店だって,閉店するか,代替わりして味が変わってしまう.その時に昔を懐かしく思い出せるよう,有名だろうが無名だろうがかかわりなく,自分の気に入った店には足しげく通った方がいい.


最新の店や,流行の店,どこそこの星が三つだのな店はいくらもある.んなものは,一生に何度口にできるかわかったものではないし,経験ではない単なる情報だ.ひとたび老舗の閉店の報が流れると,どこからともなくハイエナみたいなやつらが集まってきて,「これがあの有名などこそこの味ね」なんて言いながら写真を撮ったりしてtwitterやらにあげているやつらがいる.おかげで,今の昔を懐かしみにやってきた客も,今の常連客ですら店に入れなくなる.そうした情報をありがたがる手合いには,一生かかってもわからない味があるんだ.


いすずとは味は違うが,神保町のさぶちゃんの半チャンラーメンは,そうした年寄りには格別にうまいだろう.ここだっていつ閉店したって不思議はない.天ぷらいもやだって,さぼうるだっていい,今その店がまだ開いているうちに,記憶の奥底にしみ込ませておけばいい.


いつしか,自分の体が脂っこいものや,強い酒を受け付けなくなり,やがて外を出歩くことすら億劫になった時,自分をなぐさめるのは自分にしみ込んだ記憶だけだ.